カワコッチ

浅野良裕 | レジエ株式会社

2022. 08. 14.
Text: photo creation pupa
Photo: photo creation pupa

日本人の約10人に1人が罹患している金属アレルギー。その数は年々増え続けていると言います。それでもおしゃれを楽しみたい、アクセサリーを身に付けたい人のためにチタンでアクセサリーを作り続けているのが、レジエ株式会社です。WEBやSNSを活用し、チタンアクセサリーの販売に力を入れる常務取締役 浅野良裕さんに話を聞きました。

普段は経営や営業、催事への出店を担当している浅野さん。しかし、新型コロナウィルス感染拡大によってその状況は一変したと言います。

「催事を担当していたのでコロナウィルスが蔓延する前は県外に行くことが多かったですね。一回行くと一週間や10日くらい戻らないんですよ。でもそうすると経営のことを考える時間が少なくなって、代表である父と方向性のズレを感じるようになりました」

『会社を良くしていきたい』という思いは同じはずなのに、今までの経験や世代間による考え方の違いでズレがあり、何度も衝突しました。しかし、コロナウィルスの感染拡大で催事がことごとく中止に。この悪条件とも見える状況で事態は好転したと浅野さんは振り返ります。

「社内で経営について考える時間が増えたので、社長とのすり合わせも以前よりできるようになりました。外に向いていた視線を内に向けることで、ショップのお客さんの対応や電話・メールによる営業など外に出なくてもできる体制が確立できたおかげで、かえって会社としても雰囲気が良くなったと思います」

入職して12年。神奈川の大学でプログラミングを勉強した浅野さんは、そのまま関東でシステムエンジニアとして就職。家業に入ることは当初、想定してなかったそうです。

「うちの会社自体が平成9年にできたまだ新しい会社なんです。自分がまだ学生の時に親が立ち上げた会社なので、どのくらい軌道に乗っているかもわからない状態で。父親自身も私に継がせることより、会社の経営で手一杯だったと思います」

しかし、10数年前にチタンの安全性が話題になると健康アクセサリーブームに乗り、レジエの事業は徐々に成長。これなら安定して事業を続けられると、継ぐ話も出てくるようになったそうです。そんなタイミングで社長である父が体調不良に。この出来事をきっかけに浅野さんはシステムエンジニアの仕事を辞め、帰郷します。

「プログラミングの仕事は自分に合わないなと思っていたころだったし、父が体調を崩したりといろんなタイミングが重なって地元に戻って家業に入ることを決めました。病気になっている父に会社を継いで欲しいと言われて戻ってきたら案外すぐに元気になっちゃって(笑)こういう話、この地域だとよく耳にするのでこの辺の工場あるあるネタかもしれないですね」

チタンのアクセサリーのメインターゲットは金属アレルギーを罹患している人たちです。そもそも金属アレルギーと自身でも気づかずに生活している人も多くいると浅野さんは言います。

「単純にうちのチタンのアクセサリーを使えばいいよっていうことではないんです。金属アレルギーがなぜ起こるのか、場合によってはチタン以外でも、この金属なら大丈夫ですよ、金属じゃない他の素材も検討してみましょうって提案までいけるのが理想です」

最近ではSNSで金属アレルギーのことをマンガで発信したり、金属アレルギー協会に入り、従業員と共に講習にも積極的に参加しているそうです。

最終的には社員全員で金属アレルギーの知識を高めていき、少なくても新潟県ではここに来れば金属アレルギーの知識も得られるし、身につけられるアクセサリーの相談もできる場所になればと目標を語ってくれました。

ショップでお客さんの対応をしていると、皮膚に何らかの物質が触れ、それが刺激やアレルギー反応となって炎症を起こす接触生皮膚炎なのか、金属だけに反応する金属アレルギーなのかわからない人が見受けられるそうです。暑い時期になると痒くなる、金属のアクセサリーをつけるといつも赤くなる気がするという自覚の薄い「隠れ金属アレルギー」の方はまだまだ多いのだと浅野さんは言います。

そんな人には、金属アレルギーとは何なのかを伝えながら安心しておしゃれを楽しんでもらえるようにサポートをしていく。これこそがレジエの役割だと感じているそうです。

浅野さんはシステムエンジニアとしての働いていた経験もあるからか、WEBやSNSを駆使した販売にも意欲的です。遠くに出かけることが難しい今だからこそ、ネットで探してもらえれば全国どこからでも購入が可能です。全国の金属アレルギーで悩む人にレジエのことを知ってもらい、その人たちも巻き込んで新しいコミュニティーを作り、新商品の開発をしたいそうです。ユーザー目線で生み出される新商品が今から待ち遠しいと感じました。

チタンという素材の理解だけでなく、金属アレルギーや類似する皮膚炎の知識が豊富な浅野さん。ものづくりの知識だけでなく、それを使用する方に寄り添いながらものづくりをする姿勢にとても感銘を受けました。取材後、工場に隣接したショップに並ぶアクセサリーを眺めていると、県内だけでなく、全国、世界中の金属アレルギーで悩む一人でも多くの人にレジエのアクセサリーが届いて欲しいと強く思いました。